第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
「…ヤレ、愛い顔が台無しよ」
ダイナシ。
優しい声と共に私の部屋の扉が開く。
「あ、…おお…たに…さま…」
私は上半身だけ起き上がり、ただ、彼の姿を見つめた。
カタン、と扉が閉まり大谷様が此方へと近付き私に触れる。
「泣いていたのか」
…う、ん
「よい、ヨイ。たんと泣きやれ」
うん…
「三成が恐ろしいか」
うん、コワイ…。
「アレは真っ直ぐの塊故ナァ」
案ずるな、ワレが側にいてやろ。
大谷様は赤子をあやす様に私をゆるゆると抱きしめると頬へ、額へと優しいキスを降らした。
大谷様のカサ付いた唇と包帯の感触がこそばゆい。
ヌルり…
目元に、そして首にピリッとした痛みと生温い感触がした。
「ん…」
思わず声が出ると大谷様の手が一瞬止まる。
「ヒッ、傾国の花は流す血までもが甘いよナァ」
此処にいる間はワレだけの花でいやれ。
ワレの愛い、ヒナギクでいやれ…
私は大谷様の不思議な温もりを感じながら眠りへとついた。
「寝やったか…」
ナァ、三成…。
「……………」
この時、扉の向こうに石田三成が居た事など、私は知らない。