第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
私は未だに信じられないでいた。
女がいた部屋から出ると真っ直ぐに刑部の部屋へと向かう。
中に入り腰を下ろすと刑部は茶を施す。
「刑部、アレは何だったのだ」
誰も近付けさせなかった貴様が、何故あの様な事を。
「あの女は誰だ」
「ヒッヒッヒッ。三成、アレはワレもお気に入りよ」
相変わらずよナァ。と茶を啜りながら私の問いに答える。
「アレは毛利に天塩に育てられていた花よ、ハナ」
傾国の花、と言えばヌシにも分かろ。
「知らん」
私は素直に答えると刑部は特徴のある笑いをする。
「…毛利の所に赴いた日、ワレらに付いた女中の事は」
憶えているか?
刑部は茶を啜りながら話す。
私は毛利との同盟の日の記憶を辿るとそう言えば、と思い出したのだが…。
「それがどうした」
私には関係ないであろう。
それが私の本心だ。
そう言うと刑部はあの独特な笑いをし、こう言ったのだ。
「三成、その女中が先程の女子よ」
…………。
そうか、女は良く解らんな。
身に纏う物一つでああも変わるとは。
あの日会った時に比べると随分と雰囲気が変わるものだ。
そう言えば、刑部があの時来いとか言っていたような気もしないでもない。
来るなら文を認めるなり何らかの形を取ればこうならなかったものだ。
「三成、あの娘は隠密に来た訳よ」
私の考えている事を読み取った刑部はそう言葉にした。
もしあの女…否、それ以外の者でも刑部や 秀吉様、半兵衛様…この豊臣に危害を加えるのであるのならば、
私は喜んでこの手を更に深い闇色に染めよう。