第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
「…刑部か」
「ヤレ、三成」
ソレは大事な賜物よ、タマモノ。
カチャリ…
私は刑部の声と共に刀を下ろす。
そしてそれと同時に女も崩れ落ちた。
「あ…ぁ…」
女は呼吸の仕方も忘れ、ただ地に這いつくばるその女に刑部は近いた。
「おお、可哀想、カワイソウ」
事もあろうか、刑部は背中を摩ってやっていたのだ。
「ヌシを一人にしたワレのせいよ」
ワレのせい。
刑部が女の背中を摩りながら崩れた身なりを整え髪を流す。首に布をあてがい、甲斐甲斐しく世話をしてやると女は徐々に呼吸を取り戻す。
「あ…、お、…」
女が声を出そうとするも、まだ上手くいかず、焦点の合わない瞳で刑部の姿を手探りで探す。
「三成、女子には優しくする物よ」
そう刑部は言い、女の手をゆるりと握り、空いた掌で頬を撫でる。そして額を合わせると案ずるな、案ずるな、と繰り返し女に言い聞かせていた。
私はこの光景に驚きを隠せないでいた。
あの刑部が、私以外の人間を誰も近付ける事のなかった刑部が自ら近付き、自ら触れていたのだ。
「花よ、今日は寝やれ」
お披露目は明日にしよか、と刑部は女を褥につかせ私を連れてこの部屋から出て行った。