第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
【届かぬ声】
「何者かと聞いている」
草木も眠る丑三つ時、その時私は自室で半兵衛様に渡された書物を読んでいると敷地内で何やら風が不穏な動きを見せた。
「鼠でも入り込んだか…」
恐らく刑部も感づいているはずだ。
そう思い刑部の元へ向かったのだが、生憎部屋はもぬけの殻。こんな夜更けに何処をほっつき歩いているのだろうか。
私は刑部の気配を辿り探っていると普段使われていない客間から刑部の気配がしたのだ。あぁ、此処に居たのか。私は私は迷いもせず襖を開き、先程思っていた言葉を発した。
「刑部、此処にいたの…か」
そう言いながら開くと其処には上等な着物を身に纏った見たこともない女が佇んで居たのだ。
私はすぐさまその女の首に力を入れ刀を押し当てた。
「何者だ」
更に力を加えると恐れをなしたせいか、目が虚ろい恐怖と苦しさで震え、濁った呼吸だけが響く。
間者か。
フン…。
間抜けな間者だ。こうあっさりと私に捕らわれるとは一体何処の者なのだろうか。
「死んで主を怨むが良い」
そう言い、刀を横に滑らそうとしたその時だ。ふと足元を見ると刑部の数珠が転がってきたのだ。