第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
「それにしても綺麗な着物」
大谷様が用意して下さった着物は薄い紫で徐々に下へと濃紺に変わって非常に美しい。所々に銀の小花が散りばめられていて私の好みドンピシャだった。
「何しに来たのよ、私」
もちろん、着せ替え人形の為に来た訳ではない。
私は答えを求めに来た。
そう、あの夢の真実を。
「しかし…」
この恰好ではいざと言う時に何も出来やしない。
多分その為に着替えさせられたのだろう。まぁ、逃げるつもりもないし、逃げられる術もない。何よりも、このままだと寝れないと言う事に皆気づいているだろうか。
きつく締められた帯にため息をついていると少し離れた所から感じ慣れない気配が此方へと向かって来るのが分かった。
これは大谷様ではないのは確かだ。
では、誰だろう。
この冷めきった闇を纏う者。
「刑部、此方にいたの…か」
石田三成。
「っぁっ!?」
入って来た人物の名前も呼び掛ける間もなく、彼の刀が私の首を捉えたんだ。
カチャリ…
「何者だ」
応えろと言い彼の研ぎ澄まされた刀は私の首にくい込む。
「くっ!!」
恐い…。
恐ろしくて、声も出ない…。
私は彼がこんなも冷たく、鋭い人だとは思わなかった。
ただ、ただ、首の痛みと恐怖をこらえながら彼を見つめる事しか出来なかった。