第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
降りしきる雨の中、我は名前の存在を確認するかの様に、濡れた着物も気にせず名前をきつく抱き締めた。
名前は何度もありがとう、と言う。
あぁ、名前…。そんなに言わなくても良いのだ。
そなたが無事であるのなら、我は言葉も何もかもいらぬ。
そなたが我の側に居れば、何も…。
そして抱き合っていた腕は自然と離れ視線が合うと名前はふわりと微笑み帰りましょうと言った。
我の手と名前の手はどちらからともなく絡み、馬を引き連れて帰途へと就く。
我は誓った。
もうこの手を放しはしないと。
そなたを守ると。
自然と絡み合う指先から、
少しでも、
伝えたくて…。