第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
堕ちた花は何に縋る。
雨の降る中、私と風魔小太郎は地面へと降り立つ。
私を下ろすと彼は私の頬を一撫でし、名残惜しそうに消えてしまった。
風魔、小太郎…。
彼の名前を心の中で呟やく。
彼が消えた場所を後にして私は元就様に視線を向けた。
「元就様…」
私達は雨の中見つめ合う。
彼が近付いてきて私を優しく抱き締めた。
「攫われたと聞いた時、居ても立っても居られなかった」
私を抱き締めた元就様の腕は少しだけ震えているような気がした。
あぁ、この人はこんなにも私の事を…。
濡れた衣服も気にせずにギュっと強く抱き締め、元就様は言葉を続ける。
「そなたが無事であるのなら…」
それで…良い。
私の存在を確かめるかの様にもっときつく抱き締めた。
「ありがとう…ございます…」
元就様…。
私もそれに応える様に、腕をまわした。
こんな私でも、
素性も知れない私でも、
貴方の側に居ても…
許されますか…?