第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
明らかに動揺する気配。
この子にはまだ何かあると直感が働く。
そして、この甘い匂い…俺様を狂わせる。
彼女が欲しい、と本能が叫ぶ。
彼女の視線を感じたので俺様は片手を振りながら彼女を後にした。
暫く俺様はフラフラと情報収集をして居ると河原へやって来た。
すると遠くの方で彼女が座っているのを見付けた。
また、ちょっかいを出そうと思い、彼女の元へ行こうとするが、誰かが彼女の前に立ち阻む。
「!?」
その瞬間に彼女を監視していた忍の気配が風と共に消えていった。
「!!!」
これはっ!
それは一瞬の出来事。
大勢の忍を殺れる人物など、あの伝説とこの俺様以外に居る訳がない!
鉄の臭いがする方へ向かうと無惨な姿になった忍達が転がっていた。
狙いはあの子だ!
間違いない!
おい、おい、間に合ってくれよ!
俺様は彼女の元へ行こうと影に潜もうとしたその時、鼓膜が破けそうな勢いの爆発音が響いた。
「ちっ…間に合わなかったか…」
辿り着いた時には辺りは黒く焦げていて跡形もなかった。
ふと川の方を見ると何かが岩に引っかかっていた。
それを掬い上げると若草色の巾着であった。
彼女ので間違いない。
中を見て見ると金子が数枚入っている。
そして何気なく巾着の中を覗くと何か書いてあった。
「字か?」
裏返してみると俺様は目を見開いた。
「毛利の、家紋…」
俺様はただ、ただ家紋を眺めるだけであった。