第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
俺様にはわかる十以上の気配。
これは彼女の監視だろうか、全て忍の気配だ。
見た目は可愛い感じだが、何処かの姫って訳でもなさそう。
そう考えていると女亭主が彼女のだと思われる大福を持って近付いて来たのが見えた。
まぁ、とりあえず、監視の忍らも動きがないって事は俺様とは気付いていないみたいだし後で探りをかければ良いか。
「早く座りなよ、あの大福とかお嬢ちゃんのじゃない?」
何やら考え事をしていたのか、座るのに躊躇していたので声を掛け促してやる。
彼女の顔が若干引き攣っていたのは見なかった事にして。
彼女が座わると同時に抹茶の香りが漂い、安らぎを与えてくれる。
「し、至福!」
ぷっ!彼女、声に出てるの絶対に気付いてないよ。
あは、結構天然なのか?可愛いな。
耐えきれなくなったので彼女に声を掛けた。
「お嬢ちゃん、心の声口に出てるよ」
何なの!?この可愛い生き物はっ!
持って帰りたい! ←
声を殺しながら笑っていると睨まれた。
あは、堪らないねー可愛い。
とりあえず、ごめんねと謝っておいたが、気が済まないみたいで睨まれたままだった。
「お嬢ちゃんの食べてる大福も美味しそうだね」
睨まれたままでも良かったのだが、もう少し彼女と話していたかったので悪戯を仕掛ける事にした。
「た、食べますか?」
案の定、俺様に大福を分けてきてくれた。
「んー、これも美味しそうだけど」
俺様、こっちが良いな。
そう言い、彼女の手を掴み、食べかけの大福を一口で食べてやった。
ごっそーさん、と言い口についた餡子を親指で拭う。
「何すんですかーっ!」
顔を真っ赤にし、口を金魚みたいにパクパクとさせていた。
「さて、俺様まだ用があるから」
俺様は今の悪戯で満足し、違う場所で情報収集をする事に。
席を立ち目の前の彼女の肩に手を置き、他に聞こえない様に呟く。
「アンタ、何者」