第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
ある日妙な噂が飛び込んで来た。
"安芸の毛利元就が女を囲っている"
あの毛利の旦那に好い人とか、おもしろ…げふんげふん
いや、ね…あは、面白いしか出て来ないねぇ。
さて、旦那に許可を得て偵察に向かうとしますかね。
「…と、言う訳で、偵察へ行って来ますよーって」
準備は出来て居るからもう出発するだけになる。
「佐助、安芸へ行くのだったな?」
そうと返事をすると何か嫌な予感がしてきた。
俺様の嫌な予感は見事に的中。やっぱりそう来るよね…。
案の定、旦那は某、安芸の甘味を食したいぞ!買ってくるのだー!と。
はぁ、毎度の事だが俺様の給金、旦那の甘味代で殆どないのに…。
帰って来たら半分だけでもいいから請求しよう。
安芸に向かう途中、若い商人に変装する。俺様の変装かーんぺき。
城下に着くと旦那の為に甘味屋へ寄り、味見がてら休息をとる。
暖簾を潜ると人の良さそうな女亭主がいらっしゃい、と声をかけてくれた。
八つ時だからか、店は混雑していて空いている席があまりなく、さぁどうしたもんかと思いながら辺りを見渡すと丁度に奥の席が空いたのでそこに腰を下ろした。
女亭主にみたらし団子と三色団子と茶を注文するとあいよ、と威勢の良い返事が返ってきた。
ウチの城下も負けてはいないけど、ふぅん、悪くはないんじゃない?
そんな事を考えて居ると団子と茶が運ばれて来た。
みたらし団子は出来立てなのか、軽く湯気が漂っていた。
うん、悪くはないね。
そう言いながら暫く団子の味と感触を堪能して居ると、一人の女の子が入って来た。
お!可愛い子だなー。俺様ついてるー
辺りを見渡して席を探してるのだろうか。
俺様も周りを見てみると、空席は此処しか無く、必然的に彼女は俺様の所へとやって来る。
「相席良いですか?」
鈴を振るような声とは彼女の為にある。
そう言える程、澄んでいて美しい声。
そして少女だか女性だか分からない曖昧な雰囲気。
そして俺様を惹き付ける甘い、甘い匂い。
これは一種の毒だ。
まさか、俺様に気付いたのか…?
彼女は一体…?