第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
城を抜けて暫く歩くと城下に近付いたのか、賑やかな声が聞こえてくる。
「うわー、久々」
久々だけど、その街並みは何時もと相変わらず賑わっていた。
この街並みをあの元就様が守っていらっしゃる、そう思うと胸がホッコリする。
気になるお店を冷やかしながら情景を楽しむ。
「お腹空いたかも」
それと、少し疲れたのもあって私は近くの甘味屋へ立ち寄る事にした。
この甘味屋は毛利家女中、御用達の店で大福系が絶品だ。
私は中でも豆大福が好きだ。
前に元就様とお茶した時、調子に乗って十も平らげて元就様がドン引いていた事が懐かしい。
「こんにちは」
と暖簾をくぐり、甘味屋の女将さんに挨拶をすると、彼女は私を懐かしむ様に笑顔で迎えてくれた。
何時ものねと言うと元気な声であいよ!と返事をしてくれる。
良かった、覚えていてくれたと思うと心がホクホクになり、何時もの席へ急ぐ。
席へ座ろうと思い、行ってみると先客が居た。辺りを見渡すと時間帯だろうか、少し混雑している。
「はあ、仕方ない。相席するか」
私は先客さんの所へ向かい声を掛けさせて貰った。
「あはー、お嬢ちゃん可愛いから俺様大歓迎ってね」
「………」
どうしてこうなった…。