第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【弐拾漆】
廻る、まわる…。
廻りながら、深い、深い水底へ沈み行く。
冷たい水が私の全てを鎖す。
あぁ…秀吉様、半兵衛様、何故私を置いて行かれたのですか…。
私は、友と思っていた者と、心から愛した者に裏切られてしまいました。
私は、これから何を信じ、何をすべきか解りません。
光が、見い出せないで居ます…。
「私も、このまま漆黒の闇にのまれるのも」
良いのかも、知れない…。
そう思いながら瞳をゆっくりと閉じた。
だが、そう簡単には行かなかった。
後少しで私が私でなくなる時に、小さな光が私を照らした。
" 三成様、自分を見失わないで "
その光は私が先程まで想い、憎んだ者の声に似ていた。
彼女の声を模してそう私に語りかけて来たのだ。
これは夢か…。
憎み過ぎて悪夢に魘されているのか。
否、何でも良い…私はお前に聞かなければならない。
私はその光を見据えて重く閉ざした唇を開いた。
「お前は、何故私を裏切った…」
私はその光に向かって問いただす。
すると光は少し間を開け私の問に応えた。
" 裏切ってはいない…と言っても、信じて頂けるとは思っていません…私は、貴方の為に離れた…"
「私の、為…だと言うのか」
思考が定まらない私は、光の言う事に対して理解が出来なかった。
" はい。強制ではありましたが、結果論から言えば、これで良かったのかも知れません "
何が良かったと言うのだ。
「解らない…お前が居ないと気付いた刹那、私は私で無くなった…」
手当り次第切りつける私は、妖にでも取り憑かれたように刀を振っていた。
" ごめんなさい…でも、私が貴方の元から遠ざかる、それがあの人の願い…と言っても…?"
なん、だと…?
あの人とは…一体…。
「まさかっ!?」
その時、暗闇に閉ざされていた空間が刹那に光に包まれた。
「…くっ!」
光に囚われた私は思わず手で光を遮る。
" 三成様 "
私の名を呼ぶと共に、遮った手が優しい温もりに包まれた。
久方ぶりの温もりは、私を迷いも何もかも解き放ってくれる。
夢でも何でも良い、
私は、この温もりが欲しかったのだ…。