第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
あの日私はいつの間にか部屋へ戻り、寝ていた。
目が覚めるとゆっくりと襲って来る頭痛に頭を悩ませた。
そして、頭痛とは別の後頭部の痛み。
一体何があったって言うのよ。
元就様に確認しようとしたのだけれど、我は多忙故、名前の相手など出来ぬと目を泳がせながら逃げて行く。
何か、わかり易いなぁ。
それでも智将さまですか、貴方は…。
「これ私何かやっちゃった確定じゃないの」
何をしたか全く覚えていない私は痛む頭を抑えながら主に何を仕出かしたのだろう、そう考えて居ると背後から声が掛かる。
「余り元就様をからかうのはお辞め下さいませ…」
振り返ると苦笑いをしながら私にゆっくりと近付く美人がやって来て私にそう言った。
「あ、春蘭さん」
黒い忍装束を纏った美人くノ一さんだ。
つい最近私のお目付け役となった人だ。
女の子の友達がお菊さんしか居なかったのでこれは嬉しい限りだと元就様に感謝をした。
まぁ、別に忍さんでなくて良いのだけれど元就様曰く、私に何かあってはと非常に過保護発言。
だけど、己の身を守れない私にとっては有難いやら何やら。
春蘭さんから何か仕出かした話を聞くと、部屋へは彼女が連れて帰ってくれたそうだ。
そして一部始終何があったか話してくれた。
「ほわー」
空いた口が塞がらなかった。
元就様が避けるのも分かる気がする。
春蘭さんは続けてあの方は意外と初なのです、と口元を抑えながら上品に笑う。
「元就様って可愛らしい、かも」
春蘭さんが目を見開き、まぁと驚く。
心の中で呟いたつもりがまた口から出ていたようだ。
サァっと血の気が引き、青に変わるのが解った。
あの猫発言も然り、今度こそ輪刀の錆になってしまう、そう思った私は必死に彼女に言わないで下さいと頼み込む。
かなり必死に。
「大丈夫でございますれば」
そっと私に触れ、私も思っていましたと言ってくれる。
「秘密で御座いますよ」
彼女は人差し指を唇に軽く押し当てる。
美人は何をやっても美人だ。
羨ましい…。