第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【弐拾弐】
~猿飛佐助~
キミの温もりを知ってしまったボクは、
死ぬまでその温もりを求めるだろう。
ボクを包んでくれた優しさは、
死ぬまで忘れない。
淡い心、雨模様...。
出逢いは最悪だった。
最悪と言っても、俺様ではなくて、彼女の方。
好いてもいないし、知らない奴に辱められた彼女はきっと俺様の事を一生恨み続けるだろう。
そんな事があってから、俺様は彼女の事が気になって仕方なかった。
そして、あの匂いが俺様に纏わりついて離れないでいた。
あの時、毛利の旦那に頼まれてから俺様は個人的にも名前ちゃんの様子を見に行ったんだ。
本当に、手を伸ばせば届くくらいの場所まで近付いた。
だけども、俺様の手は豊臣の左腕、そしてその犬に遮られてしまった。
チクリ…
何かが俺様の胸の奥を鋭利な物で刺す。
チクリ、チクリと次第に鋭さが増した。
だけど、コレに気付いてしまったら、俺様は忍として生きては行けない。
今更表舞台になんて立てやしない。
そんな事は夢の中の夢。
遥か、遠い、夢の中。
目が覚めたら何時もと同じ日常が待っている。
それも、暗くてドロドロとした日々。
俺様にとって、彼女は眩し過ぎる光だった。
希望。
夢。
手を伸ばしても、届かない光。
彼女を包んでいた俺様の腕からは跡形もなく、温もりが消え去った。
「ごめん、旦那…」
己の気持ちを認めた途端、
俺様の頬に、しょっぱい雨が流れた。