第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
しかし…あの時は物凄く曖昧であったけど、今こうして落ち着いて思い出してみると結構…嫌、かなり危なかったのだなと思う…。
「んー、これもバサラと関係があるのかも知れないね」
猿飛佐助がそう呟いて私はハッと我に返る。
猿飛佐助の話を余り聞いていなかった私はそうかもね、と曖昧な返事をした。
「あのさ、名前ちゃん…」
急に真面目な顔をして猿飛佐助が私の名前を呼ぶ。
「何、猿飛佐助」
私はそう言うと、彼は頬を指先で掻きながら何処かぎこちなく言葉を紡いだ。
「あー、あの…俺様の事も…」
名前で、呼んで欲しい…です…。
「…っ!」
今にも泣きそうな、そんな表情。
勿論本人は解っていないだろう。
前に私を辱めた事は決して忘れはしないし、許せる事ではない。
正直、アンタの名前すら呼びたくない。
「あ、いや、あの、無理なら…」
だけど、
「無理で…」
だけど…
「良いんだ、けど…」
放って置けないのは…
「って、嫌だよね…」
何故…?
「…佐助」
「…っ!!」
気付いたら彼の腕の中。
私を抱きしめた彼からは草木の香りがした。
そっと腕を背中に手を回し力を込めて抱き締め返すと佐助は少し震えながら私の名前を呼んだ。
「名前、ちゃん…」
そして聞こえるか聞こえないような声で呟く。
微かに聞こえたんだ。
だけど、私は敢えて聞こえない振りをした。
" 嫌いに、ならないで…"
どう返したら良いのか、解らなかったんだ。