第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【拾弐】
「おお、名前殿。此方に居られたか!」
鍛錬が終わり清々しい風がそよぐ八つ時、某は名前殿と共に食そうと思った団子を片手に目的の人物を探す。
縁側に腰をかけ、庭を眺める名前殿に声を掛けると中途半端に伸びた髪を後ろに流しながら某に向かって微笑んだ。
某…俺は正直女子がとても苦手だ。
だが、名前殿は平気であった。
最初は驚きの為逃げてしまったのだが、名前殿に触れられた時、もっと俺に触れて下され、もっと俺を見て下されと思ってしまったのだ。
随分と前に佐助が花のような甘ったるい香りに注意しろと言っていたのだが、名前殿からは花の香りはしなかった。
その代わりに名前殿からは柔らかな心地よい香りがほのかにするだけで特に注意する程ではなかった。
「真田様はお休憩でございますか?」
鈴の様な美しい声で俺を呼ぶ。
出来れば俺の事は名で呼んで欲しいと小さかった欲が徐々に膨らむのが解る。
「うむ、鍛錬が終わったので団子を食そうと思い名前殿を探していたのだ!」
名前殿の隣に座り込む俺を見て目を丸くさせる。
俺と目が合うと直ぐに柔らかく微笑み、お茶を入れて来ると席を立ち上がった。
俺は空かさず名前殿に某が用意致しますると申したのだが、名前殿は俺に触れ、お待ち下さいと言いその場を後にした。
名前殿が触れた俺の肩がじんわりと熱い…。