第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【拾壱】
っ、はぁ、ハァっ…
苦しい…。
「右が甘いよ」
逃げたい…。
「っ、はぁっ、次っ!」
でも…こんな事で弱音を吐いていたら、この先に待って居るのは確実に【死】だ。
それに、何の為に覚悟を決めたのか、解らなくなる。
「随分と上達したね、名前ちゃん」
佐助のクナイと私の得物が高い音を立て、交わる。
「っ、ンな事ない…」
私は息もままならない状態で佐助に返す。
確かに上達している事はしている。
だけど、この世界…いや、何処に居たってこれは必要不可欠。
そう、私には体力が無いのだ。
「今日はもう無理だと思うんだけど…」
俺様も疲れたし。
「っ、私は、まだやれるっ!」
足が震える。
それでも私は自身の刀を支えにし、立ち上がる。
「全く、困ったひいさんだこと」
そう言った猿飛佐助と私の膝が折れたのはほとんど同時。
私は地に膝を着く前に猿飛佐助に抱き抱えられていた。
「っなにをっ!!」
何をする、と猿飛佐助に向かって怒鳴ろうとした。
だけど、私の言葉は最後まで続かず、其処で途切れた。
「熱心なのは良い事。だけど、自分の事も考えなくちゃ」
そんな状態で続けても身に付かないし、大怪我に繋がる。
「…っ、猿飛佐助の癖に生意気だ…」
猿飛佐助は何だよ、それはと苦笑いをし、私を姫抱きにしたまま部屋へと戻って行く。
本当に、生意気だ。
忍の癖に…
あんな表情をして本気で心配してんじゃないよ…。
「…調子、狂うじゃん…」
「何か、言った?」
心の中で思っていた言葉がいつの間にか漏れていたけど、猿飛佐助には届いていないようで少し助かった。
優しい猿飛佐助は何だかむず痒い気がする。