第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【※玖】
「…っ、は…っぁ…っ」
違う…。
「も、っ…あっ…っ」
違う、違うんだ…。
幾ら抱いても違う。
ワシが求めているのは
「っ…、名前、殿っ!!」
彼女だけなんだ。
「…家康、殿」
情事を終えたワシは祈織に呼ばれ、はっと我に返る。
何時も祈織を抱いた後、何故この様な事をして居るのだろうと嫌悪する。
だが、祈織と名前殿の纏う気が同じせいか、祈織に求められると拒む事が出来ずにそのまま流されてしまうワシが居た。
祈織と繋がっている時、ワシの目には祈織が名前殿に思えて仕方がない。
名前殿を抱いている錯覚に陥る。
名前殿と初めて会ったのは、あの日の事だった。
雨が降りしきる中、三成達を探しに行った時だ。
忠勝の背に乗っていると何処からか血の臭いと甘い花のような香りが入り交じり、何とも言えない匂いがワシの鼻腔を刺激した。
その匂いを辿ると何かに群がる数人の男達。
目を凝らして見るとその何かとは、後に知る名前殿であった。
ワシは直ぐ様忠勝から飛び降り男どもを蹴散らした。
手足を縛り、着物も剥ぎ取られ、辱められたその姿は何とも言えない気持ちになった。
あの日の事を思い出すと胸が締め付けられる。
もっと早く見付け出せていたのなら、あの様にはならなかったのかも知れない…。
「あぁ、済まない…。ワシはまた…」
乱れた衣服はそのままでワシは謝る。
今のだと祈織に謝ったのか、それとも名前殿に謝ったのか分からないが…。
どちらにせよ、祈織には惨めな思いをさせるだけなのだが、祈織はワシに頬を摺寄せ何時もと同じ言葉を紡ぐ。
「宜しいのですよ。全ては私が望んだ事…」
あぁ、済まない…。
やはりワシは…
あぁ、名前殿…。