第4章 ~くるり、くるりと悠久の輪廻~
【捌】
「そ、某は佐助だとばかり思い、まさか客間ににょ、女人の客人が居られるとは知らず、勝手に扉を開けた無礼をお許し下されっ!!」
ぅおやかたさぶぁあぁぁあぁぁあッっ!!
ズゴンっ!!!
だから私は名前ですって…真田幸村様。
「き、気にしておりませぬ故」
お顔をお上げ下さいませ…。
「し、しかしっ!」
女性が苦手って言うのは向こうの世界から知っていたけど、ここまで来ると何だか可哀想になる。
まぁ、女好きよりはまだマシか。
とりあえず、真田様を何とかしないと…。
先程から何度も畳に額を打ち付けている訳で、徐々にその部分だけが赤く色付いてしまっている。
本当に、勘弁して欲しい…。
「真田様、私は豊臣秀吉が父、娘の#名前#と申します」
どうぞ、よしなに。
とりあえず、少しでも真田様の気を引こうと無難に自己紹介をする事にした。
勿論こんな私が豊臣を名乗って良いものか悩んだけど、彼らの役に立つのであれば、喜んで人質にでも何にでもなる。
私は、心優しいあの人の事だって喜んで陥れる。
自己紹介が終わると少しだけ真田様の額が上がった。
私はそのチャンスを逃すまいと失礼しますと声を掛け、無理矢理顔を上げさせる。
「っ!」
くりくりとした可愛らしい瞳に私が写る。
やはり真田様も皆同様に良いお顔をしている。
羨ましい限りだ。
準備しておいた手拭いを真田様の額にあてがい、真田様に向かって微笑む。
お馴染みのセリフを叫ばれるかと思い、心構えはしておいたがそれは意外にも不要で終わった。
「か、忝ないでござる…」
真田様の声は震えていた。
顔は真っ赤になり小さな声だったけど、しっかりと私に届いた。
何、この可愛い生き物は…。
「あらら…」
猿飛佐助が何か言っていたけど、私はそれ所ではなかった。
破廉恥って叫ぶ真田様もらしくて良いのだけれど、こんな乙女チックな真田様も非常に好物だ。
何か良く解らないけど、私まで真田様の赤面が移ってしまい、二人して何してるのよ状態。
付き合いたてのカップルかってーの!
「あ、どう、致しまして?」
てか、何言ってるの、私!
(名前殿は真、心の広いお方なのだな!)
(そんな事御座いませぬ)
(名前ちゃんじゃないみたい)
(るせーよ)
(何この温度差…俺様泣いて良い?)