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【戦国BASARA】闇色夢綺譚 ※R18

第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ


「何を固まっておる…」


元就様は両手で持っていた物を片手に持ち直して器用に引戸をしめる。

そのまま私の元へ来て腰を静かに下ろした。


酒が不味いと言った元就様は私の手を引き、彼の部屋へと押し込まれた。

その時、私は足が縺れて膝を強打した事は後で元就様をとっちめてやろうと心に誓う。

「怯えるでないわ」

これでも睨んでいるのですよ、これでもねっ!

そんな心境はつゆ知らず、元就様はマイペースで私の目の前に何かを差し出してきた。

「お、お酒…?」

徳利にお猪口が二つ。香る匂いは先程とは違う上品な香り。

元就様曰く、あれは酒ではないと仰ります。
多分、あれが私ら一般人が手の出せるお酒で、元就様の様な大名クラスの方々が呑むお酒は次元が違うと思う。
だって、そんな方にアレを出したら海原〇山よろしく、店主を呼べ!みたいな事になるでしょ。

お菊さん、ごめんね。

そんな事を思っていると〇山…じゃなかった、元就様が話しかけて来た。

「月ならここからの方が良く見える」

確かに、此処ならはお月様もぐっと近くなったような気がする。

我の酒に付き合えと仰り元就様がお猪口に注ぐ。

はっとして私が注ぎますと言うと我が注ぐと言い、遮られた。


主に注がせてしまった…。
これを他の人が見たら切腹しろとか言われるんだろうか…。

程よく注がれたお猪口を眺める。微かな蒸気と共に香る、先程よりは匂いがキツくない。

主自ら注いだ物を手渡された。
渡し方一つも元就様は美しく魅せ、これだけでお腹いっぱいと思うと私は安上がりな女なんだなとしみじみ思う。


元就様が呑むがよいと仰ったので、ドキドキしながらお猪口に口をつける。

「!!!」

口の中に入れた瞬間に柔らかく、まろやかで丁度の良い甘さが広がった。

「っ…!」

私がお酒の味に感動し元就様に同意を求めようと横目で彼を見ると月明かりに照らしだされ美しく薄らと微笑んでいる元就様がいたんだ。

「まだある故、ゆっくりと呑むがいい」

元就様が何か仰っていたのだけれど、私の胸がドキドキと煩くて、それを誤魔化す様にお酒を煽ったんだ。

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