第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
半兵衛様がそう仰った時だ。
風が舞い上がったと思えば、いつの間にか彼女と北条の忍、風魔が現れていた。
風魔の気配が読み取れないのはまだしも、彼女の気配まで読み取れなかったのだ。
私はただ、呆けて彼女を見つめた。
「随分…上手くなった…ね」
半兵衛様は途切れ途切れになりつつも言葉を綴った。
そしてそれに伴い、半兵衛様の体重が私にかかる。
そして暫く間が開くと閉じていた彼女の唇が薄らと開き言葉を紡いだ。
「左近が…教えてくれた」
彼女は手を胸の前で組み、震える声で半兵衛様に言葉を返す。
「あぁ、彼は気配を消すのが得意だったね…」
全く、教えなくても良い事を…。
そう言った半兵衛様は困った様に微笑む。
「知っていたのですね…戻った事を…」
そう言った彼女はゆっくりと半兵衛様に歩み寄る。
「あぁ…僕の為に、そして…三成君を導く為と知っていて黙っていたんだね…」
半兵衛様はそう仰ると、彼女は頷いた。
「…君には、適わないな」
ため息混じりに瞳を閉じる。
そして言葉を続けた。
「君は…僕がこうなる事、そして、これからの事を知っている…そうだろう?」
静かに頷く。
「それは、どうやっても…」
覆せない…。