第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
仕事が終わり、元就様に報告する為にお茶の用意をして部屋へと向かう。
「元就様、名前です」
声を掛けると入れと返事が返ってくる。
失礼しますと部屋へ入る。
「元就様、終わりました。御一緒にお茶しましょう」
仕事が終わるとささやかなティーパーティーをする習慣になったのだが、元就様の様子が少し変だった。
お菊さんが言った通りで、本当に恋煩いなのかと様子を伺っていると元就様が口を開き、私の名前を呼んだ。
「名前…」
私はハイと答え、次の言葉を待つ。
「そなたは何の夢を見るか」
…え?
な、に…?
「あの日…名前からの報告が来ぬ日、我はそなたの元へ参った」
ちょ、乙女の部屋に勝手に入ったのね!
破廉恥だわ、全く…
って、何か、巫山戯ている雰囲気では無さそう。
「時折、呼ぶのだ…」
誰、と。
「そして、これは…」
元就様は袖から白い紙で包まれた何かを取り出す。
開けて見よと私に差し出した。
夢と言う言葉が出て来たせいか、包を開ける手が震える。
「っ…!?」
私は思わずそれを落とした。
どうしてコレがあるのか。
何時、どうやってコレを手に入れたのか。
だって、この花がこの日本に持ち込まれたのって明治時代の筈。
「コレはそなたの手からこぼれ落ちた。我は知らぬ…」
知らぬ花ぞ…