第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「三成、賢人と姫君…ヤレ、何処に行っていた」
ヌシが居ないと煩くて堪らぬ。
私は自身の席に着くと刑部が話掛けてきた。
私が居る、居ないでこの場がかなり変わるそうだ。
何故だか分からんが。
暫く賑やかな宴は続いた。
彼女の様子を一目見ると少し顔色が悪いように思えた。
私は様子を伺いに席を立ち上がろうとしたその時だ。
半兵衛様が彼女の手を取るとそのまま跪き、そして彼女の手の甲に唇を落とした。
周りから歓声が上がる中、私の頭の中は真っ白に染まる。
動揺して膳に置かれた酒を倒してしまったが、その事にも気付きはしないまま、呆けていた。
「三成…」
ようやく刑部の声で我に返り、上がったままの腰を再び下ろす。
倒した酒に私が写る。
" 半兵衛様と目が合った "
確かに、私を一瞬見た…。
「半兵衛様…名前…」
私の独り言は刑部だけに留まった。
その後直ぐに秀吉様もご退出なさり、私も秀吉様、半兵衛様、それに、#名前#姫が居ない宴の席などただの騒音にしか過ぎず、私も刑部もその場を離れた。
途中刑部と別れ、私は自室へと戻る。
「はぁ…」
私は溜息と共に布団に沈んた。
そして、席に戻る前に半兵衛様が仰った命を思い出す。
「彼女について話がある。宴が終わり、頃合を見て…」
僕の部屋へ来てくれ給え。
半兵衛様はそう仰っていた。
私も、あの事について聞きたかった。
恐らく、今夜全てが明らかになるだろう。
私の中の蟠りも、全て、無くなる事だろう…。
そう考えていると、いつの間にか十三夜月が真上付近に浮かび上がっていた。
少々寛ぎ過ぎたか…。
私は重くなった身体に活を入れ、起き上がり半兵衛様の元へ向かった。