第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
僕は彼女の手を引き、宴の席を離れた。
先程の彼女は見物だった。
顔を真っ赤にし、今にも溶けてしまいそうだった。
君は本当に可愛い。
まぁ、これで本当に君を手に入れるには超えなくてはならない壁があるのだが、何とかなるだろう。
僕が彼女にした行為。
彼はどう思っただろうか。
彼女の手に唇を押し当てている時、彼の方へ視線をやると、酒を零して動揺していた。
僕が皆の前であの様な事をするとは誰も思わないだろうね。
これは皆に、彼に対しての宣戦布告だ。
特に彼には、ね。
そんな事を思っていると、あっという間に彼女の部屋の前に辿り着いていた。
「今日はお疲れ様。早く休むんだよ」
僕は繋いでいた手をゆっくりと解き、また明日と言うように微笑み踵を返した。
掌にはまだ彼女の温もりが残っている。
まだ、触れていたい。
もう少し、傍に居たい。
そんな想いを胸に秘め、彼女から遠ざかろうとしたその時だ。
再び、僕の掌に柔らかい感触と共に優しい温もりに包まれた。
振り向くと、顔が真っ赤に染まった彼女が居た。
そして、僕が必死になって抑えていた物を簡単に打ち砕く言葉を紡ぐ。
「行かない…で」
もう…どうなっても、
知らない。