第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【twenty-eighth.】
あの後、軽く三人で言葉を交わし、一度宴の席へと戻った。
戻る間際に重治さんは石田さんに何か言っていた。
彼女って言っていたからきっとわたしの事だと思う。
何だろう…少し気になる。
暫く賑やかな宴は続いた。
わたしはと言うと、賑やかな場所はまだ身体が追い付かず、直ぐに疲れてしまった。
「疲れたかい?」
疲れたわたしに重治さんは気遣ってくれる。
「あ、はい。少しだけ…」
わたしはそう答えると、彼は席を立ち、秀吉様の元に行った。
賑やかなのは嫌いじゃない。
もう少し皆と居たいけど、身体は正直で早く横になりたいと悲鳴をあげていた。
「秀吉が先に上がって構わないって」
君の部屋まで送るよ、と重治さんはそう言ってわたしの目の前に手を差し出した。
「あ、ありがとう、ございます…」
彼は薄く微笑み、わたしの手を取る。
片膝を着きながらだなんて、何処の王子様かしら。
いや、どんなお伽噺の王子様よりも素敵だった。
そんな彼だから、わたしは何時もドキドキする。
想いはどんどん募るばかり。
わたしは顔を赤くして彼の手を借り、手に力を入れて立とうとしたその時だ。
「今日の君はこの日ノ本一、美しいよ」
そして、わたしの手の甲に唇を落とした。
その瞬間、周りから歓声が上がった。
「ふわぁぁっ!!」
そして彼は今日の、じゃなくて何時もだったね、と微笑みながら付け足す。
もう、わたし溶けちゃうよ…。