第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【twenty-third.】
あれから大変だった。
重治さんは何か良く分らないオーラ?みたいな物を纏わせ、クマさんをボロボロの雑巾みたいにして庭に転がしたんだ。
あ、クマさんってのは黒田官兵衛さんと言って、わたしの知っている武将さんとはやはり違うわけで、どう言う経緯でそうなったか分からないけど、手には錠?手枷?が付いていて、更に鎖が続いて最後にわたしが驚いた鉄球、と来たもんだ。
本当に、びっくりした。
でも、わたしが本当に驚いた事は重治さんの方だった。
思い出すだけでも背筋が凍る程、恐かった。
出来るなら、記憶から抹消したいくらいに衝撃的な出来事だった。
と、に、か、く!
彼を…重治さんを怒らせてはいけないなと心の奥底から思いました。
って作文!?
「出来たかい?」
ドキン…
支度をしていると声がかかった。
もう、コレで二度目のときめき。
それと、違う高鳴り。
ホント、どうにかしてよ…。
「あ、はい。でも…髪が…」
失礼するよ、と一声掛かり、わたしの部屋へと入る。
「やはり、僕の見立てに間違いはなかったようだね」
良く、似合っているよ。
「っ…!」
ああっ!もう!
狙ってるんですか!?
どうしたいんですか!
何なのっ!?
重治さんと違ってわたしは恋愛経験もないし、そんな言葉を掛けられたら、勘違いしちゃうし…。
釣り合わないし…。
可愛く、ないし…。
何か、自分で言ってたら悲しくなってきたし…。
もう…。
そう考えているとわたしの頬にほんのり暖かい温もりが差し掛かった。
重治さんの手が頬を挟む。
「そんなに自分を卑下するんじゃない」
君は誰よりも可愛い。もっと自分に自信を持つんだ。
「重治さん…」
ホントに、この人はっ!
勘違い、するじゃない…。
「わ、わた…っ!?」
わたしが言葉を話そうとした時、目の前に影が出来た。
本当に突然の事で頭が回らない。
あれ?
呼吸って、どうするんだっけ?
言葉って、どう話すんだっけ?
人間として当たり前の事が頭の中から消え去る。
「っん…」
甘い…。
彼にキスをされているって分かったのはもっと後の事で、今はこの甘い時間をただ感じていたいと思った。
やっぱり、わたしは…。