第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「風が冷たくなって来た」
部屋に戻った方が良い、と少し高い声。
それはさっきまでわたしが想っていたあの人の声。
それと同時にわたしの肩にふわりと布がかけられた。
それは重治さんが用意してくれた打掛けであった。
この打掛以外にもわたしの為に用意してくれた物全てにおいてわたしには釣り合わない。彼は似合っているよと言ってくれるけど、着ている本人が思っているの。
似合わない…。
「重治、さん…」
そんな事を思っているだなんてこれっぽっちも気付かない彼はさぁ、行こうと促す。わたしは重治さんに従い共に部屋へと戻った。
この時、重治さんには言わなかったが、月の光に紛れて本当に何かがあったんだ。
あれは……?
孤独なお月様。
そんな寂しい顔をしないで。
美しいお月様。
アナタは誰を探しているの?
わたしはもう一度だけ、月を見た。