第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
今迄に聞いた事のない音が耳を貫き、我に返る。
辺りを見渡すと彼女の部屋……。
否、此処は…何処だ。
そして、今に至る。
確かに私は彼女の部屋で意識を飛ばした。そしてこれが夢だと言う事は間違いない。
ただ、私の知っている夢ではない。
余りにも現実離れしていて頭が付いていかなかった。
「ほ、本多、忠勝…」
否…違う、な…。
戦国最強とはまた違う鉄らしき物の塊が、馬よりも速い速度で何度も私の横を通り過ぎたのだ。
この物体に可擦りでもしたら死に至ると私は瞬時に悟った。
私の真横にある石だか、岩だかよく分からない物体に恐る恐る指先を近付け、軽く触れて見た。
「触れられる…」
冷たい感触、辺りに漂う嗅いだ事のない臭い、そして、
人々の装い。
何だ、あれは…。
南蛮の形に似ているが、此方の方が若干生地が薄い様な…。
私は辺りを警戒しながら道とは言えない硬い石の上を歩く。
どうやら行き交う人々には私の姿が見えないようだ。
「しかし歩きにくい、それに…」
暑い…。
今迄歩いた事も、見た事もない。
それがあたり一面に敷き詰められ、陽射しが照り返り更に気温を上昇させていた。
私は何処に居るのだ…。
私はこの様な場所は…
知らん…。
私はまた一歩と足を踏み出す。
暫く歩いていると視界が開けた場所に出た。
風がそよぐ。
私の髪がさらさらと流れる。
その場所は此処に来てから久しく嗅いでいない土の匂いが流れ、私を安心させてくれた。
辺りを覆い尽す草花に足を踏み入れ見渡してみると、何と説明して良いのか、良く分からない物が幾つもあった。
「何だ、これは」
触れてみると又しても冷たい感触。本多忠勝よりは少し柔らかい感触だ。他にも生き物を型どった色とりどりの物体もあった。
夢とは言いきれない夢だ。
その時、今迄とは違う気配が近付いて来るのを感じた。
私はすかさず刀に指を伸ばした。
「!」
しかし、伸ばした指先は空を切り、横になった時に手放した事に気付く。
「くっ…!」
私は姿勢を引くし、素手でも戦えるようにその気配に集中した。
徐々に此方へと近付く気配。
私はこの気配に刹那に囚われる事になった。
姿形は違えど、今は確か。
近付く気配は…