第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【sixteenth.】
揺れる、ゆれる…。
廻る、まわる…。
濁った空、
霞んだ視界、
何とも言えないニオイが鼻の機能を奪って行く。
そして、見た事のない数々の物が異物を排除するかの様に私を囲む。
「此処は…一体…」
彼女がいない。そう思うと一人の夜を迎える恐怖と孤独に怯え、眠れない日々が続いた。
あれは何日目の夜だったろうか。
名前の残像を求め、気付くと彼女の部屋の前にたどり着いていた。
分かっているのだ。
だが、勝手に足がこの場所へと向かってしまう。
部屋の中に入り戸を閉め適当な場所で膝を折る。そして彼女の姿を探すも、在るのは彼女の残り香だけだ。
その香りが私を包み、彼女がいる様な錯覚を覚える。
私はそのまま後ろに倒れると、大の字になり天井を見つめた。
考える事はただ一つ、
「名前…」
其処で私の意識は途絶えた。