第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
それからの君は見ていて飽きなかった。顔色が赤から青に変わったりと忙しそうで。
久々に楽しいと思った。
初めて会ったのはまだまだ少女とも言えなかった時だ。
「ねぇ…」
未だに赤くなった頬を抑えている
彼女の手に僕は己の手を重ねた。
夢と現実が入り混じる世界で僕は君に出逢った。
初めて逢った時に感じた事を思い出すとあの時の欲望が渦を巻く。
「約束だよ。僕を忘れないで…」
僕はそう言いながら幼かった彼女が摘んでいた小さな白い花に手をかけた。
「また、逢ってくれるかい?」
彼女の手にその花を握らせると
彼女は顔を赤らめながら頷いてくれた。
「ふふっ…。良かった」
その瞬間に、また空間が歪み出し、目覚めの時刻だと知らせる。
「僕の名は半…あぁ、重治だ。」
僕は " 重治 "と名乗った。
君には本当の名を知って欲しかった。
僕が僕で居られるように。
「しげ、はる、さん…」
今では僕をこの名で呼ぶ人間はいない。
僕の名前をそう呼べるのは、
君だけだ…。
「約束だ…」
そして、少し強引に口付けをした。
二度目の口付けは目眩がする程甘かった。