第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【twelfth.】
地獄、なのだろうか。
先程の浮遊感の余韻のせいで足元が覚束無い。
それによって少し身体が傾く。
僕はすぐさま近くの柱に手を付いた。
「!」
しかし、その付いた柱に今迄にない違和感を感じ、思わず手を引く。
「これは…柱、なのか…」
恐る恐るソレに指を伸ばし触れてみると足元と同じ様に冷たくて硬い石の様な物であった。
僕ははっとし、辺りの確認を急ぐ。
「なっ…!」
薄汚れた空気、見渡す限りの見た事のない物体、溢れ返る人の群れ、そして…
「ほ…本多君?」
本多忠勝に良く似た大きさで、馬よりも速く今迄に見た事の無い物体が僕の横を通り過ぎる。
遅れて到達する風に些か恐怖を覚えた。
どうなっているのだろう。
僕は確か何時もの発作で倒れた筈だ。
己自身を見てみると、夜着のままであり、そしてその証拠に袖が赤く染まっている。