第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【tenth.】
確か、こんな感じだった。
人より少しだけ冷たいけれど、真綿の様に包んでくれた掌、とても大切にしてくれた…。
いつも、優しく抱きしめてくれた…。
待っていたの…。
アナタが綺麗だねって褒めてくれた髪だって伸ばし始めたし、少しはアナタに近付きたい、アナタに似合う人になりたい、そう思って女の子らしい事したり、苦手だった化粧だっていっぱい頑張った。
もちろん、勉強もね。
なのに、アナタは突然居なくなってしまった。
毎日あの公園に足を運んだ。
雨の日も、風の日も。
今日こそアナタに逢えるんじゃないかって…。
でも、行ってみても何も変わらなかった。
あるのは何時もと同じ寂れた遊具、疎らに敷き詰められた白い花…。
白詰草が雨風に曝されて、寂しく佇んでいるだけだった。
それはわたしの心を写しているようで、より一層哀れに感じた。
そして、わたしは祈ったの。
お願い、神様…。
わたしの願いを叶えて…。
あの人に逢いたい…。
逢いたくて、逢いたくて、
あの人の名前を呼びたいの…。
もう一度、あの人の温もりを感じたいの…。
あの人の事を想うと胸がこんなにもギュッとなって…苦しくて、寂しくて、切なくて…
どうにかなりそうなの…。
どうして良いのか分からないくらい、あの人の事が…。
お願い、お願い…。
わたしの願いを叶えて…。
今直ぐじゃなくて良いから、
わたしをあの人の…
あの人の元へ…。
わたしは白い花に祈りました。