第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
僕は彼女に口移しで薬を飲ませた。
薬は嫌いだ。
僕も毎日の様に飲んでいる。
飲んでいても、意味のない薬…。
なのに、今は…
苦い筈なのに…
とろけるように甘く、混ざり合う。
早く、僕に君の名前を呼ばせて…
早く、その声を聴かせて…
もっと、もっと君のぬくもりを…
早く、君の笑顔を見せて…
「ん、はぁっ…」
彼女の甘い吐息と苦い薬が混ざり合う。
彼女がこの様な状態にも関わらず、理性だけが先走る。
僕はそれを押し殺し、誤魔化すように彼女を強く抱きしめた。
そして、ゆっくりと、時間をかけて彼女に薬を飲ませた。
あぁ、早く君の笑顔を僕に見せておくれ…。