第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【ninth.】
身体中が熱い…。
まだ傷口から全身にかけて熱が帯びているからね。
わたしは、死んでるの?
ちゃんと、生きているよ。
本当に…?
あぁ、
「ほら、ね」
するとわたしの頬が穏やかで温かいぬくもりに包まれた。
あぁ、このぬくもり…。
もう、ずっと、ずっと…。
「君は長い間、眠りについていたんだ」
そう、なんだ…。
「薬の時間だよ」
そう言って手で背中を支えてゆっくりと慎重に起き上がらせてくれる。
………。
おかしい。
薬が入っている湯のみに手を伸ばそうとしているのだが、全くと言って良い程、手が動いてくれない。
「無理もない。寝たきりだったから身体が追いつかないんだ」
そう言って、身体を支えながら薬を少しずつ飲んでと言い、湯のみを口元へと運んでくれた。
ゴホッ!ゲホッ!!
口も思った様に動かなく、少しの筈が大量に口の中に入ってしまい、咳き込んでしまった。
ごめん、なさい…。
「大丈夫かい?」
彼は近くにあった布で口元を拭ってくれる。
迷惑かけて、ごめんなさい…。
「気にしなくて良いんだよ」
それよりも、君が元気になる事が先だ。
そう言って彼の手が頬を撫でる。
ぬくもりが、心地良い…。
わたしは目を閉じてぬくもりを確かめる様にすり寄せた。
「やはりこれでは飲めないか…」
わたしは目を開け、彼を見つめる。
すると、彼は湯のみを再び手に持った。
「今更だけど、今迄こうして君に薬を飲ませていたんだ…」
失礼するよ、とそう言って彼は湯のみに口を付けた。
!!!
わたしは何が起きたのかわからなかった。
彼が湯のみに口を付けたと思ったら目の前が真っ白に染まった。
口の中に温くて苦いドロドロとした液体が広がる。
少しずつ咽ない様に、ゆっくりと流れ込んで来る。
あぁ、わたし…。
苦い筈なのに…
とろけるように甘く、混ざり合う。