第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【※eighth.】
僕は毎日彼女の元へ足を運んだ。
薬を飲ませるのも、身体を拭う事も全て。
執務など忙しい毎日の中、必ず時間を設けた。
彼女だけは誰にも触れさせたくなかった。
特に三成君には会わせるのも、触れさせるのも、何かと理由を付けては追い返し、彼女には一切の面会を拒否していた。
僕のつまらない嫉妬だ。
そしてあの時、家康君は残党らを生かして捉えて来た。
その時は家康君に人手は多いに越した事はない、と残党を牢に連れて行ってくれと頼んだ。
僕は彼に笑顔を見せつつも、腹の奥底では彼女をあの様な目に合わせた者共をどう殺そうかと、終始考えていた。
もちろん、直ぐには死なせはしない。
あぁ、部分的に火炙りにしようか。
自分の手や脚が、黒くグツグツと焼け行く所を見せつけるのも良い。
勿論、少しずつ、ゆっくりと…。
自分の肉はどんな味がするのだろうね…。
フフ…
楽しみだ。
僕がこの様な考えを持つ人間だと知ったら、君はどう思う?
僕は君が思うほど、綺麗な人間ではない。
手段も選ばず、目的の為ならばどんな色にも染まる。
その為の " シロ " だ…。
君は君のままでいて欲しい。
君には闇の色なんて似合わない。
僕は闇の中でしか生きられない人間。
だから、僕の代わりに光となり、僕を支えて欲しい。
そして、僕の無二の親友の様に導いて欲しい。
君が光なら、僕はその影となろう。
光と影は表裏一体。
そう、僕と君だ。
僕らはそうなる運命。
君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
そう…
少しでも、この命が続くのなら…。
あなたのためなら、捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、逢瀬を遂げた今となっては(あなたと逢うために)できるだけ長くありたいと思うようになりました。百人一首 50番 藤原義孝