第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「こんな所で何してんすかー?」
島左近、只今帰りましたー…って、明らかに三成様の様子が只ならぬ雰囲気だった。
顔を上げて俺を見た時、三成様の目が何時もと違っていて、まるであの時の…
そう、あの時の俺と同じ目をしていた…。
愛する者を手放す様な…。
俺が討伐に出向いている時に話は少しだけ耳にしていた。
俺だって、その話を聞いた時、腸が煮えくり返る思いをし、彼女をそんな目に合わせた奴等を切り刻んでやりたいと何度も思った。そして、無事を聞いた時は全身から力が抜け落ち、膝が折れた。
三成様の気持ちは痛い程に分かる。
分かるけど、こんな状態の三成様を見たら下の奴らに示しが付かないし、それに…。
俺がどんな想いで彼女を…どんな想いであの手紙を渡したのか…。
そして、俺が必死になってアンタ達に追い付こうとしているのに…。
三成様…
俺、分からなくなっちゃいますよ…。
この時、俺と三成様は何を思っていたのだろう。
そんな心境にも関わらず、吹く風は何時もと変わらない。
そして、手を伸ばしても誰も救ってはくれない。
身体が、全てが泡沫となって消えて行く…。