第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「…つまりは君が駆けつけた時には…」
彼女はあの状態だったんだね?と僕は家康君に問う。
すると、彼はああ、間違いない。と答えた。
話を聞くと、彼女を連れ去ったと思われる奴らを散らしたが、彼女は時既に遅く、あの状態で発見した、と言う訳だ。
もう少し遅ければ、彼女は命を落としていたかも知れない。
それだけが救い、か…。
しかし、彼女の精神状態が心配だ。現に…。
「半兵衛様?」
半兵衛殿、と二人から声をかけられはっと我に返る。どうやら長い間考え込んでいたようだ。
「…君達は下がって良いよ」
僕はこのままやらなきゃ行けない事があるからね。と二人を下がらせようとすると、三成君が僕に一つ言葉を紡いだ。
「半兵衛様、彼女の様子を…」
三成君は今にも消え入りそうな声で僕に許可を求めた。
「…ああ、構わないよ」
但し、静かにするんだよ、と念を押した。そして二人は去って行った。
「………」
やる事を終わらせた僕は様子を見に行こうと、彼女が眠る部屋へと足を運んだ。
部屋の近くへ行くと僕は足を止めた。止めたと言うより、進めなかった。
「あぁ、名前…済まない…名前…」
三成君がか細い声で彼女の名前を呟く。
三成君…君は…。
僕は踵を返し、その場を去った…。