第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【sixth.】
「…だが、三成君、僕からは何一つ言える事はないんだ」
この事は彼女に深く関わる事だからね。と、半兵衛様はそう仰った。
つまりは半兵衛様の一存では話せない内容のようだ。
私は今まで何をしてきたのだろう。
彼女の事を何も知らないで共に過ごしてきた。
彼女の事を知る半兵衛様に少しだけ、嫉妬心が生まれた…。
「半兵衛殿、先程は失礼した」
私と半兵衛様との会話が途切れ、その間もなく、戸の向こうに知った声が掛かる。
「あぁ、家康君か。入りたまえ」
半兵衛様がそう仰ると家康は失礼する、と声を掛け部屋へと入って来た。
家康が入ってきた瞬間、私は奴に掴みかかった。
「家康っ!!貴様っ!何故あの時言わなかったっッ!!」
あの時彼女は無事とだけしか伝えなかった家康に腹を立て、斬りつける勢いで怒鳴りつける。
「落ちつけ!三成!あの時はっ!」
「言い訳なんぞ見苦しい!貴様がぁっ!!!」
私が家康の言葉を遮り、刀を構え奴に斬りかかろうとした刹那、その間に半兵衛様の御手が差し掛かった。
「いい加減にしないか」
場を弁えたまえ、三成君。と私を制する。
「っ…!し、しかし、半兵衛様っ!家康めがっ!!」
私が言葉を発すると、半兵衛様は冷ややかな視線でもう一度、私の名前を呼んだ。
「も、申し訳…御座いませ、ん…」
私は逆らう事が出来ず、刀を収め、謝罪をし俯いた。
「…家康君、何があったか説明してくれ」