第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
お菊さんが仕事は上がって大丈夫と言うお言葉を有り難く受け取り私は元就様はシャムかな?ソマリかな?と考えながら元就様の部屋へと向かう。
部屋の前に着くと膝を折り、声を掛けた。
「失礼し「入られよ」…」
挨拶は基本だろ、コノヤロー。
戸を開きながらそんな悪態を心の中で呟くと元就様の顔が若干引き攣っていた事は即デリート。
「良い香りですね。お抹茶でしょうか?」
部屋に入ると抹茶の優しい香りが私を癒した。
「執務が終わったのでな。一服と思い名前を誘った迄よ」
そう言った元就様は私をお座敷に促す。
「嫌いか?」
そう言われると私は即答で好きですと答えた。
デカい声で。
そんなキラキラした私を見た元就様は目を丸くさせ驚いた表情を見せるも、直ぐに薄ら微笑み私のハートを掴み。
ぶはっ!
携帯があったら写メ撮りまくってただろう。
そんなに悶えているなんて知らない元就様は私にお茶請けを薦めてきた。
「茶請けはどちらが良いか」
一つは何時も食べている美味しい芋ようかん。そしてもう一つは夢小説では必ずと言っても良いほど出て来る一品だ。
カステラだなんて懐かしいな、とは言ってもまだひと月も経っていない。
だけど、そんな事を思ってしまう私は着々とこの世界に馴染んで来てしまっているのだろう。
「名前が纏っていた着物が南蛮の物に似ていたのでな」
取り寄せた。
元就様…。
やはり、お優しい方。
皆が言う程冷たい人ではない。
「それに、最近悩んでる様に見えたゆえ…」
目を大きく見開き、元就様を見つめる。
悩む…うーん、確かに悩んでいる様な、そうでない様な…。
あぁ、でも胸の中のモヤモヤはずっと晴れないでいる事は確か。
「べ、別に名前の為とかそう言う訳ではないぞ!」
薄らと頬を赤くし、必死に言い訳を述べる元就様は私をどうしたいのでしょうか。
もうね、鼻血が出そうです。
もう可愛すぎ。
「そう言う事にして置きますね、元就様」
ありがとうございます。
心の中でお礼を述べる。
まだ何か言っているが、聞こえない振りをしてお茶とお菓子(勿論両方)を頂いた。
勿論元の世界は大切。
だけど、元就様のお気遣いが嬉しくて久々に気が休まる時間を過ごした。
狂ッタ時ガ、始マリノ鐘ヲ鳴ラス…