第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
夢はどうして直ぐに忘れてしまうの?
私が見る夢は、どうしてこんなにも苦しくて、切ないのでしょうか…。
夢は例えるなら砂の様。
両手でそっと掬いあげるのだけれど、指の隙間からさらさらとこぼれて消えてしまう。
そして、二度とは戻らない。
だから夢は儚いって言われる。
だけど、私の場合は少しだけ特殊な方だと思う。
「名前様、元就様がお呼びでございます。元就様のお部屋へとお急ぎ下さいませ」
庭で兵士さん達の着物を干していると同じ女中のお菊さんがやってきた。
因みに、このお城に居る人全員が私の事を名前様と呼び、敬語で話して来る。
最初は辞めて下さいと言ったのだが、皆が皆、口を揃えて
"わたくし共の首が飛びかねます"
元就様、貴方は皆に何て説明と言う名の脅しをしたのですか…。
「お菊さん、私何かしましたっけ??」
つまみ食いがバレたかな…。
顎にてを添えて考えているとお菊さんが口を開いた。
「いえ、そう言う事ではないと思います。何時もより雰囲気が柔らかかったので」
お城の皆は元就様の雰囲気、気配、視線などに物凄く敏感だ。
下手な事をするとすぐ輪刀の錆になると知っているから。
でも、私の前では借りてきた猫。
彼と接するようになってから私には甘いと言う事が判明した。
「元就様が猫だったら何の種類かな?」
そんな事を呟くと近くの部屋から物凄い音が聞こえた。
あ、ヤベ。
聞かれたか。