第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
【third.】
あぁ、名前、名前早く、
速く、
はやく!!
私は今迄以上の速さで城へと急ぐ。
早く、私のこの目で名前の無事を…!!
私は城に着いたのだが、城の中の様子がおかしい事に気が付く。
「一体、どうしたと言うのだ…」
城に入り、そこらの人間に乾いた布を持って来させ雨に濡れた自身を拭う。
ある程度拭い半兵衛様にご挨拶と彼女の所在を聞きに半兵衛様の自室へと向かった。
半兵衛様の自室が見えて来ると異様な雰囲気が汎う。
すると、半兵衛様の部屋から女が飛び出して来た。
私は何事だと思い、女の手を掴み、捻りあげ声を上げた。
「貴様!半兵衛様の!」
女は押し殺した悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。
私が女に怒鳴りつけていると半兵衛様の声がした。
「三成くんかい!?キミも手伝うんだ!!」
私は半兵衛様の声色から只事ではないと感じ、失礼ながらも半兵衛様の部屋へ飛び込んだ。
「なっ!!」
私は声を失った。
私が見た光景は一生忘れる事はないだろう。
あ…名前なの…か…。
彼女の上に半兵衛様が跨り、抑えつけていた。
「っくッ!人間は何処にこんな力があると言うの、だっ!」
三成君!何を惚けているんだ!
半兵衛様は私に足を抑えろと命令する。私は慌てて返事を返し、彼女の足を抑え込んだ。
私の目の前には足から絶えず流れ出る名前の血液。
一体何が起きたと言うのだ…。
僕が彼女を抑えていると、知った怒鳴り声が響く。
この声は三成君だ。
丁度良い、僕が思っていたよりも彼女の力が遥かに強く、女中だけでは手に負えなかった所だ。
僕は三成君を呼び付けると返事が返り、僕の部屋に飛び込んできた。
その瞬間、彼の表情は驚きに変わる。無理もない。彼にとっても大切な彼女がこんな姿なのだから。
固まっている三成君を呼び覚まし、足を抑えるようにと命じる。
彼は素直に応じ、彼女の足を抑え付けた。
さぁ、これからが地獄の始まりだ。彼女も、三成君にも、そして、僕にも、ね…。