第2章 ~ゆるり、ゆるりと籠の鳥~
「全く使えぬわ」
我の声に存在感のない長曾我部が反応する。
「使えねぇって意味分かんねーよって、それよりもよォ、」
相変わらずの調子で我に話し掛けてくる。鬱陶しい。
奴はまぁ、まぁ、と我の背を叩いて宥めようとするも、無駄に馬鹿力で我はそのまま吹っ飛ぶ。
ズシャ…。
「あ」
「…………」
奴はあー、その、何だ、済まねぇ。と頬を掻きながら目を泳がせながら詫びを入れた。
我は立ち上がり、身体に付いた砂埃を払い、長曾我部に向き直る。
「…して、何用ぞ」
下らない事ならば、輪刀の錆にしてくれようぞ。
物騒だなぁ…。
あー、そうだった!と手を叩き言葉を続けた。
「お前が嫁さん貰ったって聞いてよぉ」
見にきたんだよ、と長曾我部は辺りを見渡し、目的の人物を探す。
嫁とは一体何処で聞いてきたのだ。
おそらく名前の事であろう。
しかし、今は此処には居ない。
余計な事を言えばこ奴の事だ。
人の陣に遠慮なく進入し、探し回るであろう。
現に今がそうだ。
鬱陶しい。
「嫁とは、語弊よ。貴様には関係あるまい」
さっさと帰るが良い。
「何だかよく分からねーが、お前ぇ、」
今、この世の終わりみたいな顔してんぞ…。
「…っ!」
黙れ、黙れ黙れっ!!
それくらい、我が良く知っておるわ!
貴様に言われたくない!
貴様に…
何が分かると言うのだ…。
あぁ、名前、そなたは今、何を思っているのだ…。
「毛利…お前に一番似合う言葉を贈ってやるよ…」
" 哀れ " だ…。
我に長曾我部の言葉は届かなかった。