第1章 ふわり、ふわりと夢、うつつ
「…ん、」
まだ出会って間もない私達なのに、何故キスしているのだろう。
私の元就様のイメージはこう言う事しない人だと思っていたのだけれど…。
「…な、ぜこの様な事を…」
戯れにも、程がございます…。
離れた唇は未だに熱を帯びていた。
私は震えながら元就様に問うと我にも解らぬと返って来た。
「其方を見ていると…何故だか、否…」
それっきり言葉はなく、互いは無言になった。
「あ、し、失礼致します…」
とにかくこの場を何とかしたくて、私は何事も無かった様に頭を下げ立ち去ろうとしたその時だ。
「名前よ…其方は今、何処から来たのだ?」
え?
何処からって、私は此処まで真っ直ぐ来た筈だよね…。
「起きて直ぐ此方まで来ました…」
私は素直ににそう応えると、再び元就様は私に近付いた。
「えっ?…ちょっ???」
元就様の顔がゆっくりと近付く。
また、キス…される?
思わずキュッと目を瞑ってしまった私を誰か殴って欲しい。
「なんだ、足りなかったのか」
あぁ、恥ずかしい…。
勿論キスどころか、触れもしない。
オマケにそんなセリフを頂いた私は今すぐ死にたい気分だ。
「まだ…寒い。早く部屋に戻るがよい…」
私は真っ赤に染まった顔を両手で隠し踵を返した元就様の後ろ姿をただ見つめていた。
「先程の話だが…」
そう言った元就様は一旦立ち止まり、横目で私を見る。
そして、言葉を続けた。
夢の狭間に囚われる。