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【マフィア松】鳥籠の花嫁【R-18】

第2章 憧れはいつだって


「こほん、すまない。ここにいる紳士、淑女の皆様。今日はわたしの娘がいるから日本語にする。
さて、改めて言うが…わたしのたった1人の娘を紹介しよう。さぁ、おいで。」

そう言うと、スポットライトが会場の端っこに座り込んでいたわたしに伸びてくる。

突然のことに、ただ呆然とする。

いきなり、なんの前触れもなく、淡々と。

(どうしよう、腰が抜けて足が動かないよ!)

そんなわたしを見て、貴婦人たちがヒソヒソと声をあげ、嘲笑っている。

古典風に言えば、これがきまり悪いってことなのかな…。

ステージに目をやれば、優しく笑みを浮かべる男が。
手を伸ばして早くこちらに来いと、催促してくる。

(はやく、いかなくちゃ…でも腰が…!)

子鹿のように震える足をなんとか、床にピタリと付け合わせるものの、膝に力が入らず、がくり!

と胴体が下に落ちていく感覚がした。

(あ、転ぶ…!うそ…!?)

あぁ、恥ずかしい。
少し背伸びをして、飛び込んだ大人の世界はわたしにはまだ早かったのかな…。




しかし、目線があと少しで、カーペットに落ちると思ったその瞬間。

長い腕が、わたしの上半身に差し出され、床にぶつからないようにクッションになっていた。そして、そのままの体制からぐーっと上体を直立に直し、そしてプルプルと震え、くの字とは逆方向に曲がった膝裏にもう片方の腕が入り込んでくる。

要約していえば…転びそうになったところをお姫様抱っこに変えられたと言うこと。

会場からはおーっとコーラスのように賞賛の声が上がる。

こんな状況で、人生初のお姫様抱っこにわたしの脳内は既に周知という言葉で埋め尽くされていた。

「え、あ、あの‼︎あ、ありがとう、ございます?でも、重いので、いいです!下ろしてください!」

そうはいうものの、仮面をつけた、おそらく男性の表情は虚しくも読み取れない。

ただ、一つ言えることは、子鹿のように震えるわたしを嘲笑っていた紳士淑女の人々とは違った、優しい雰囲気を醸し出していた。




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