第2章 憧れはいつだって
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場面は急転換。わたしは今、父が暮らしを営んでいるといわれるイタリアの地にいる。
そして、パーティー会場である大きなお屋敷の中に用意されたホールにひっそりと紛れ込んでいるのだ。
あの手紙から一週間後、お父さんがプレゼントにと用意してくれたドレスを身に纏い、手配してくれたプライベートヘリでイタリアに向かったのだった。
高校生のわたしには純白なウェディングドレスだけではなく、華やかで真紅のこのカシュクールワンピースでさえも、一生のうち着るとは思わなかった。
パーティーはあと10分ほど。
早くお父さんに会わなければならないのだけれども、まだ主役の座には誰も座っていない。
暇つぶしにと思って、改めてざっとホールを見れば学校の体育館の10倍は軽く超えているし、パーティー会場に集まった人は女であれ、男であれ、着飾りはもちろんのこと、仮面をつけている。
あぁ、そうか。
ヨーロッパの貴族は仮面をつけるんだったっけ。
郷に入っては郷に従え。
ことわざに従い、一応わたしも仮面を装着している。
ただ、息苦しいがもう少しの辛抱。
大時計をみればそろそろ夜の12:00を指そうとしている。
そのとたん!
ぱちり。
会場の電気が一瞬にして消えた。
が、また、ぱちりと白熱を帯び始めた。
目を凝らしてみれば…
パーティー会場の祭壇に、なんとも凛々しい…が、少し厳つい顔をした仮面を外した男が立っているではないか!
そして会場は熱狂。ぴゅるり、と口笛を鳴らす者。
ビールを振り、泡を飛ばす者。クラッカーを鳴らす者。
人それぞれ、行動は違っていたものの、その表情は歓喜に包まれていた。
「もしかして…あの怖そうな人が、お父さん?」
男が手を挙げると、舞台の袖に隠れていたバニーガールかマイクを持ち運んでくる。
男はすうっと息を深く吸い、そして…
「Buona sera!Sia il benvenuto nel partito della mia mia figlia!!(ようこそ!わたしの私の娘のパーティーへ!)」
と、叫んだ。完全なるイタリア語だ…。