第2章 憧れはいつだって
わたしの家は、都心から少し離れたマンション。
朝になれば街は赤色に染まり、夜になればカラフルな光が浮かび上がる。その景色がこの建物から見渡せるのだ。
お母さんはわたしが中学生になった時に亡くなってしまって…その時、どうすれば良いかわからなかったわたしに手を差し伸べてくれたのは、なんと所在も消息も分からなかった、いや、一度も会ったことのない父と名乗る存在だった。
わたしが年頃の女の子、つまりは自立して働けるようになるまで勉学を怠らない、常に上位をキープすること。
これを条件にお金と家には困らずに今まで生活することができた。
もちろん、お父さんなんて高校生になった今でさえ見たことはない。今は何しているの?どこに住んでいるのか、年は何歳なのか。職業は?なんて全然知らない。
実際にこれまでしてきたやり取りだって、お母さんが他界した時の一本の電話と、父がくれるお金の明細書だった。それと月一度のお手紙くらい。
今日はそのお手紙が届く日なのだ。
あたりが闇に包まれる中、わたしは自宅へ辿り着いた。
自室の部屋の番号がついたポストに手を突っ込み、ガサゴソと漁る。
あった。
人差し指と親指で紙の端をキュッと摘み上へと引き上げる。今日の手紙は一段と手が混んでいるようなか気がした。
「わぁ!」
思わず感嘆の声を上げてしまった。幸い周囲に人はいなかったので変な人とは思われずに済んだみたい。
話を戻すと本当に手の込んだ手紙である。
大きさは通常の封筒の2倍くらいで、真っ白な紙に包まれているものの、本物の薔薇のような香りを放つしっとりとした手触りの真紅の花が右上端に取り付けられていた。
今回はいつもとは何か違うことが起こりそう。
期待に胸を弾ませ、軽快に踊り、自室へ向かうのだった。