第2章 憧れはいつだって
女の子の憧れはいつだってそう___。
ガラス越しに映る、純白のドレス。ふんわりと綿菓子のように広がる裾部分。腰回りには蝶のように艶やかなレースがりぼんの形に可愛らしく結び付けられている。背中の部分は少し大胆。肌を覆う部分の面積は少ないけれども、色っぽくって…なんというか、ひとつ大人の階段を登れそうな気がする。
からんからん、とベルの音が鳴り、ブライダルショップから出てくるカップルを見ると心臓がほんのりと温まっては鼓動を高鳴らせて、あぁ、私も早くこれを着たいなぁなんて思ってしまうのである。オレンジ色の夕日に照らされ、ぴたりと寄り添う二つの人間の影。
いつかわたしも…
なんて考えるだけ無駄なのだと思う。
まだ高校生なのに、しかも彼氏なんて1人も出来たことない私にとっては白い純白のドレスなんてただの夢物語にしか過ぎないのだ。
ひんやりとした硝子がわたしの手に伝わり、そして脳にまでその冷気は届き頭を冷やしてくれた。先ほどまで身体中をほとばしっていた熱気が異様にはやく奪われた。
君にはウェデングドレスなんて似合わない。
さぁはやく帰った帰った、とでも言われている気分だ。
街頭の電球も熱を帯びはじめ、黄色い光を放ち始める。
色とりどりのネオンがぱちり、ぱちりと次々につきはじめ、これからは大人の世界になるのだと悟る。
さて、そろそろ夢物語はお終い。
夜の街には相応しくない少女は帰らなければならない。
御伽噺のお姫様には似合わない、スーパーのビニール袋をクシャリ、と握りしめわたしは帰路についた。