第29章 ねんまつねんし、再。〜第三体育館組、全員集合〜
昼はホットプレートを使いペッパーライス。みんな、特に木兎の輝く瞳に絆され準備したお肉もご飯も全部使ってしまった。
昼の片付けは赤葦が率先してやってくれたので、私は少しだけ休憩。片付けが終わったのを確認すると再びキッチンへと移動し、出来上がったおせちをお重に詰めていく。今回は去年より品数が多いから詰め込めるかは微妙…なんて思いながら詰めていくが、意外と綺麗に収まり満足な顔のまま蓋をし冷蔵庫に入れる。
残った端っこや小さな切れ端を夕飯を作るまでの休憩のつもりで、コーヒーを入れて食べようとすれば、廊下を走る音。
「美優ー!」
サークルに行く時間になった様で、家主の私に挨拶に来たのだろうがタイミングが悪い。お皿の中の切れ端たちを見つけてしまったのだろう。キラキラとした瞳でこちらを見る木兎を無視できない…
『どれ食べたい?』
「伊達巻!」
伊達巻…密かに楽しみにしている伊達巻の端っこ。みんなにバレない様に少しだけ厚めに残したそれを楽しみにしていたのに…
そう思いながら新しい箸で持つと木兎の口に放り込んだ。
食べた本人はニコニコである。
「んんっ!ふは、これやっぱ好き。家で食うのより優しい味すんだよなぁ。幸せの味。」
みんなの好きそうな味に寄せ甘さ控えめで作った伊達巻。それを褒められるのは嬉しくて、反対の端っこも差し出せば嬉しそうにそれも口に放り頬を緩めながら咀嚼をする。
この顔、好きだなぁ。
美味しいものを食べて頬を緩ませる瞬間。
みんなのこの表情が見たくて進んだ料理への道。
好きな道を極めるにはまだまだ時間は必要ではあるけれど、この瞬間が見られるから頑張れるんだよね。
そういえば、去年も同じことを木兎に思い出させてもらったなと頬を綻ばせる。
『木兎、美味しかった?』
「おう!美優の飯はやっぱりうんめぇよな。」
『ありがと。木兎、お疲れ様会終わったら連絡入れてね。帰ってくるの見計らって蕎麦作っちゃうから。』
「そばもあるんだもんな。美優の飯さっさと食いたいから早めに終わらせてくる!」
いってきます!
元気な声で家を出ていく木兎に台風のようだと苦笑しながらコーヒーを口に運べば、それは少しだけぬるくなっている。それさえもしょうがないと笑えば、追加のために牛乳を温めはじめたのであった。
