【おそ松さん】もう二度と恋しないなんて言わないで【過去編】
第2章 お屋敷での共同生活
全く、朝騒々しく屋敷を駆け回っていたやつとは別人だな。
「そなたの新しい名は芒〈ススキ〉と書き、〈ノギ〉じゃ。
さぁ、跪き、誓いなさい。」
ス、と立ち上がるのと同時に
世喜が向かいに片足を立て、跪く。
本当は起請文を用いて誓わせたいところだが
生憎まどろっこしい手間は嫌いだ。
これでも十分な効果を得る。
「私、佐波世喜は本日より名を芒〈ノギ〉へと改め、
生涯貴方様へ遣えることを誓わせていただきます。」
言い終えるのを見届け、
ノギの頭に手をやる。
「少々痛むぞ」
そっと目を伏せる。
ノギがく、と息を漏らしたのが分かった。
右胸、服から素肌がのぞく辺りに
拳ほどの黒い模様が浮き上がる。
芒が2本と鳥居をモチーフとした家紋のようなものだ。
鳥居が私を表し、芒が咲夜と紅夜を表す。
「これでお前はわらわたち狐の遣いじゃ。
覚悟せいよ?ノギ。」
ふふ、とほほ笑み肩の力を抜けば
「生涯お世話になります」
と向かい側から緊張のほぐれた声がした。