第2章 に
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俺には『仕事が終わったらつまみと酒を買って帰って風呂入って飲んで寝る』ってルーティーンができてたはず。
『仕事が終わったら携帯を確認して着信があれば智君の家に帰り風呂、食事、晩酌、寝る。』これが日常になるとは思ってもいなかった。
最初はいきなり自宅に招かれ戸惑ったりもした。
何かあったのかと何を言うわけでもない智君にこちらからさぐりをいれようとしたが、彼の態度はいつもと変わらずだった。ただ時間を共に過ごすだけだ。
それなりに歳は重ねてきた。
仕事は特殊だがそれなりにお付き合いもしてきた。
ただ自分の時間を相手に縛られたり、ルーティーンを乱されるのが嫌になり結局はうまくいかなかった。
智君との時間は戸惑いはあったが嫌ではなかった。
グループのメンバーとして長い期間過ごしてきたからだと考えて納得させていたがあまりにも心地よく過ごせている。
それは智君が俺のためにと色々としてくれているからだということに気づいていた。
そしてメンバーだからでは収まらない気持ちになりつつあることも、、、
ただ智君は何も言わない。
何を求めて俺と過ごしているのかわからない。
だから俺は何も言わない。
もう一度、長く息をはくと、下になっている左手をゆっくりと動かした。
目の前にある映画の為に染められた真っ黒な髪を梳く。
触れる瞬間に少し震える手に緊張しているのを自覚させられた。
S「このままでいい。」